ふと想像する時があるの。
今まだここに君がいたら。
この場所で家族が全員帰って来るまで
ひたすら玄関の方を今でも眺めているんだろうな。
あの子が腕の中で甘えている時は、
ふと本当は君もずっと前からこうしたかったんじゃないかって。
ピライドの高い君がやっと抱っこしてと自分から我がままを言うようになってから、
抱けなくなってしまうまではあっという間で、
残して行った腕のぬくもりはすぐに消えてしまったよ。
あんなにあんなに長く一緒にいたのに、
いなくなってからの時間の方がはるかに長く感じるのは、
いつか君にまた会える日をどこか待っているからなのかな。
君と過ごした家からこの春家族は引っ越してしまうけど、
今までと変わらなく夜中に母をトイレに案内してくれるかしら。
母のもうろくか寝ぼけているのだろうと始めは疑ったけど、
母は特にそれぐらいしかおかしな事は言わないし。
どうやら今でもトイレまでの案内は続いているらしい。
なんとなく信じてしまいたくなるうれしい不思議。
こうやって君を思う日をくれたことが君からの最後のプレゼントだったんだね。